双子のように育てられた、白い肌と青い目に金髪のアズールと、浅黒い肌に黒髪黒目の乳母の息子アスマール。しかしアズールは町の家庭教師に預けられることになり、乳母とアスマールは海のむこうの母国へ追放された。成長したアズールは乳母から聞かされた「妖精の国」である海のむこうの国へ旅立つ。しかしその国では、青い目は悪魔の印とされていたのだ。監督は『キリクと魔女』のミシェル・オスロ。
 アズールが白人、アスマールがイスラム系(らしい)という設定からも一目瞭然だが、異文化コミュニケーションが作品のテーマの根底にある。外国からの出稼ぎ労働者や移民が多いフランスでは、国内での文化摩擦は深刻な問題となっている。自分と違う文化圏の人とどう付き合っていくかというのは、観念的ではなくアクチュアルな問題(もちろんどこの国でもそうなのだが、日本とは切迫感が違うだろう)なのだ。
 アズールは最初こそ「こんな国いやだ!」と異国に拒否感を示すものの、好奇心旺盛に異国のことを知ろうとしていく。海の向こうは不思議の国だった・・・というよりも、不思議の国に見えるのはその国のことを知らないからで、知ってしまえば別に不思議でもなんでもないわけだ。最初に流れ着くのが貧民街、たどり着くのが富豪となった乳母の家(貿易で一山当てたという設定がすごい)というのも、不思議の国ではなく貧富の差のある普通の国ですよというところを見せていて、気配りが行き届いている感じ。
 異国に流れ着いたアズールと対照的なのが、何年もこの国に住んでいるというもの語彙の男クラプー。彼もまたアズールと同じように、ジンの妖精を追い求めてこの国にやってきて、失望した。彼はこの国に不平不満ばかり言うが、ポロリと「それでもこの国が好きだ、この街で暮らしていかなくてはならない」と漏らす。移民の心情を代弁しているかのような言葉で、ぐっときた。そして自分たちを追放したアズールの国をずっとうらんでいたアスマールも、最後に心情を漏らすのだ。
 おとぎばなしらしくハッピーエンドではあるものの、彼らの行く先には一抹の不安もある。個人レベルでは理解し合っていてもそれが国とか民族レベルになっていくとどうなんだろう、また理解し合っていたつもりでも、全く違う文化で育った2人がずっと一緒にやっていけるのかと。しかしそれでも、やらないよりはやったほうがいいんじゃないのという、捨て身のポジティブさみたいなものも垣間見られたと思う。ちなみにこのラスト、地域的な文化だけじゃなくて、一部階層も飛び越えている気がする。これでカップリング成立したらすごいぞー。あと、エルフの精が自分では何もせずにイケメン(資産あり)ゲットしているあたりは大変うらやましい(あれ?)。ルックスと経済力の前には文化の違いも吹き飛ぶのでしょうか。それはそれで大変わかりやすいが。