車や戦闘機がロボットに変身していろいろ戦う。本当にそれだけの為に作られた映画と言っていい。清く正しい映画ファンが本作を褒めることはまずないと思うが、私は変形ロボットがドンパチやる話が大好きなので喜び勇んで見に行きました。結論から言うと、期待は裏切られなかった。生まれて初めて(そしてこの先二度とあるかどうかわからない)マイケル・ベイ監督に感謝した。今更のようにトランスフォーマー実写化してくれてありがとう(ご存知の方も多いだろうが、トランスフォーマーは元々玩具。後にアニメ化され日本でも大人気だった。結構歴史は長い。)!
 トランスフォーマー(映画内ではオートボットと称されていたと思うのだが、トランスフォーマーとして慣れ親しんでいるのでこれでいかせてもらう)たちの造形、動きには非常に力が入っていて、目玉であろう変形シーンは素晴らしい。こんなにたくさん間接があるのに全部きちんと動くんだよ!ちゃんと自動車が人型ロボットになるんだよ!特にスタースクリーム(戦闘機型トランスフォーマー。悪者。)が空中変形するシーンにはしびれた。砂漠に潜むスコルポノックのうねうねした動きもすばらしい!ちょろっとづつしか見えないところがまた質悪くてしくていーなー。メガトロン閣下あたりになるとジョイント多すぎてどうなってんのかよくわかんなかったけど・・・。ともあれなんか夢が一つ叶った感が。ハリウッド映画でロボットが変形して見えを切る姿を見ることができるとは。
 しかし何と言っても魅力的なのは主人公のガードマンであるバンブルビー。彼が喋れない(音声機能が故障しているので、ラジオを鳴らしてコミュニケーションを図る)という設定は秀逸だった。無言故にけなげさが増すというか、こうー、犬猫的な愛らしさがね、あるわけですよ。もうたまらんです。なんでうちにはトランスフォーマーの人が来ないのかな!と本気で思いました。一方、オプティマス・プライム(何故コンボイでないのか・・・!)を初めとする、他のトランスフォーマー達のキャラをあまり打ち出せていなかったのは残念。もっと一体一体のキャラを楽しみたかったのに。
 ただ、トランスフォーマー本体の見せ方に関してはちょっと問題もあって、クロースショットが多すぎる。全体的にどこがどう動いて変身するのかが見たいのに、ジョイント部分だけ映されてもなー。また、大きいもの同士のアクションシーンでは多少ロングで撮った方が、全体的な動きの面白さが分かるはず。もっと上手い見せ方があるはずなのに、非常にもったいない。
 また、撮影に関しては手ブレ風な演出が多用されているのも気になる。その場にいるような臨場感を出したいのだろうが、どうも惰性で使っちゃっている感があって、ここはやらんでいいだろ、と思う所も多々あった。クロースショットが多いのと同じく、何がどうなっているのかよくわからなくなっちゃうという弊害がある。臨場感とアクションの迫力とを履き違えているんじゃないかしら。ベイ監督は基本的に映画撮るの上手くないのかも・・・。
 上手くないと言えば、人間キャラクターを出しすぎたのも難点。軍と政府の秘密組織と、両方はいらなかったと思う。人数増えすぎてとっちらかっちゃった感が。しかもそれぞれに見せ場を作ろうとするので映画が無駄に長くなる。主人公の両親の造形は悪くなかったですが。活躍する人たちがほとんどナード、主人公が極めつけのボンクラというのもよかったです。つまりボンクラのナードが主に見に来ると思ってこの映画作ってんのか・・・。
 さて、アメリカ軍が活躍する映画ばっかり撮っている(本作にも米空軍が協力)ので、ベイを「このアメリカバンザイ野郎め!」と見なす向きもあるだろうが、この人は実際の所、アメリカを愛しているというよりも、軍事大国アメリカが持っている最先端の戦闘機やミサイルやその他もろもろの軍事設備を愛しているんじゃないかと思わなくもない(愛国者ではあると思うが、それほど濃くはないと思う)。新たな軍事大国が現れたら、案外あっさりとそっちに関心が移るかもしれない。
 ところで、トランスフォーマーたちによるコメディチックな部分がちょっとミスマッチという声を聞くが、ビーストウォーズを見てしまったおれらには屁でもないぜ!と思いました。悔しいのは日本語吹替え版の上映館が少ないこと。そして大人が見に行ける時間帯には吹替え版の上映がないことです。玄田先生ボイスのコンボイが見たいのにー!