2005年秋の川崎市議会議員選挙。自民党公認として宮前区から出馬することになった山内和彦(40歳。妻帯者。元切手コイン商。鉄道旅行好き)。しかし彼は秘書経験もなく川崎市に遅延・血縁も全く無い。落下傘候補としてたまたま白羽の矢を立てられたのだ(東大卒だったかららしい)。政治の素人が果たして当選にこぎつけることが出来るのか?
 政治の世界というと何となくキナ臭い気がするし、生活していく以上必ず関わっているのではあるけれど、あまりお近づきになりたくないなぁという漠然と倦厭していたのだが、ベルリン国際映画祭をはじめ、各所で非常に評判の良いドキュメンタリーだったので見に行ってみた。そしたら面白かった!いやー面白いですね政治の世界は(笑)。しかしやはりキナ臭いのね・・・。
 字幕、ナレーション一切無し(撮影者が被写体に質問することはあるが、ごくわずか)の「観察映画」なのだが、これが非常に面白い。取材対象の面白さはもちろんあるのだが、それ以上に想田和弘監督の「ここが面白いぞ」という場面選択のチョイスがいいのだと思う。選挙運動のシーンだけではなく、ぎゅうぎゅうづめになった満員電車や、小学生の登下校、ダルそうに整列する幼稚園児など、見慣れているけど客観的に見ると笑える風景を随所に挿入している。そういう意味では、かなり外部から見た日本という要素が強いかなと思う。
 逆に、日本人が見ると、確かにおかしくて笑えるのだが、素直には笑えない気まずさというか、ちょっと口の端がひきつるような居心地の悪さがある。特に選挙の内幕は、日本の地域社会の土着のものがどろーっと流れ出てきたような感じで、笑えると同時にうわぁ・・・とげんなりする。映画の主人公たる山内さんは政治家としての経験はなく、気ままな性格。しかし(自民党公認として出馬したからかもしれないけど)政治の世界は保守的で上下関係に厳しい体育会系。山内さんは怒られてばかりだし、一緒に選挙活動を手伝う彼の奥さんも、「仕事は(奥さんは勤め人)辞めた方が」といわれてとうとうキレてしまう(ちなみに政治の世界では「妻」とは言わずに「家内」というのが一般的なんだそうです)。思っていた以上にコンサバな世界なので、正直びっくりした。名前ばかりを連呼する街頭演説(しかも殆どの人が立ち止まって聞いたりはしない)や駅前での「いっていらっしゃいませ」連呼など、改めて見ると(いや改めて見なくても)相当笑える。でもそれが現状なのだ。
 普通にやっている選挙がこんなにユカイで笑える、が笑う対象は笑っている私たちの生活に密着したものなのだ。そう思うと、やっぱり素直には笑えない。