ニースの老舗キャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエル(クロード・ブラッスール)が急逝した。彼の息子のような存在であった手品師のニッキー(ジェラール・ランバン)と、その離婚した妻、そして子供達が久々に顔を合わせる。ガブリエルの遺言で、店はニッキーの息子である異母兄妹、ニノ(ミヒャエル・コーエン)とマリアンヌ(ジェラルディン・ベラス)に譲られることに。
 タイトルには「女たち」と付いているが、必ずしも女たちの物語というわけではない。むしろ物語の中心にいるのはニッキー、そして死んでしまったガブリエルだ。何も知らなかったニッキーは一貫して何も知らず、周囲に翻弄されるばかりだ。しかし当人は結構ちゃっかりとしていて、キャバレーの歌姫レア(エマニュエル・ベアール)を口説こうとやっきになっている。他の登場人物も、ガブリエルの秘密やニノの実母アリス(カトリーヌ・ドヌーブ)の登場により引っ掻き回されるものの、何だかんだ言って自分のやりたいようにやっているあたりが、フランス人的なのかもしれない。皆、悪びれないところがいい。ちょっとした会話や辛辣な言葉に、くすりと笑ってしまうシーンがたくさんあった。ニッキーの元嫁アリスと元カノ・シモーヌ(ミュウミュウ)が結託するあたりは、おかしいのだがちょっと怖い。したたかな女2人の前では、ヘタレ男には勝ち目がなさそうだもんね・・・。元嫁がカトリーヌ・ド・ヌーブだってのが迫力ありすぎて更に怖い。
 人間年をとっても、自分は誰かに愛されている・愛されていたのか、不安でしょうがなくなるものなのかもしれない。「この人は本当はあの人を好きだったのでは?」「あの人とこの人の過去に何かあったのでは?」「ていうか自分て愛されてなかったの?」と推測ばかりがどんどん先走っていく様は滑稽ではあるのだが、あー、あるよねこういうことって・・・と苦い気持ちにもなる。しかし、それをいつまでも気に病んでいてもしょうがない。何かをふっきって、一歩踏み出していく登場人物達の姿が清々しいのだ。人生、いくつになっても何が転機になるかわからない、嫌いな人を嫌いなままとは限らないという、ちょっと希望の持てる映画。ガブリエルとニッキーの最後のやりとりは泣ける。父と息子の物語でもあったのだ。やはり「輝ける女たち」ではミスマッチ。
 それにしてもドヌーブの貫録はすごい。この人、年をとってきてからビッチな女の役が似合うようになったな(笑)。こんな人敵に回したら、勝てる気がしません。ミュウミュウの一見おばさんぽいキュートさと対照的だった。また、エマニュエル・ベーアルが案外歌が上手い。吹き替えかと思っていた。女優達だけでなく、レトロなキャバレーの内装等、セットも楽しい。美術や衣裳のセンスが良かった。着ている洋服で、その人がどんな人かちゃんとわかる。特にマリアンヌが来ていた黒のケープがすごくかわいかった。ほしい!