フィリップ・ソレルス著、堀江敏幸訳
 モーツァルトの一生、そして天才の謎を追う。といっても伝記小説でも研究所でもなく、モーツァルトに誘発された散文といった感じだ。軽やかな文体で、モーツァルトの音楽の核にあるものに直観的に迫っていく。冒頭、タクシーの中で運転手といっしょに「レクイエム」を聴くシーンが象徴的だ。一定のリズムによって運ばれていく雰囲気の作品。・・・と書いておいてなんですが、私モーツァルト作品はさほど好きではありません。ソレルス作品にも思い入れなし。一重に堀江の訳文が読みたかったの。