建築家のウィル(ジュード・ロウ)は長年のパートナーであるリヴ(ロビン・ライト・ペン)とその娘ビーと暮らしているが、3人の関係はぎくしゃくしていた。ある日ウィルと友人サンディの合同事務所に窃盗団が入り、コンピュータ等が盗まれてしまう。しかも数日後にまた窃盗が入った。夜中、窃盗犯を捕まえようと事務所前で張り込んでいたウィルは、オフィスに進入しようとしていた少年を追いかけ、家を突き止める。少年の母親は自宅で仕立物をしているらしい。後日ウィルは、客を装い少年の母・アミラ(ジュリエット・ビノシュ)と親しくなる。
 アンソニー・ミンゲラ監督の新作映画となる。ジュード・ロウは監督の前作『コールドマウンテン』からの続投だ。しかし『コールド~』では一途な男役だったのに、本作では2人の女性の間でふらつく男役と対照的だ。ウィルはリヴとの付き合いは長いものの、結婚はしていない。ビーは情緒不安定でリヴはビーに付きっ切り。ウィルはそれにいらだっているし、疎外感を感じているのだ。そんな状態から逃避したくて、彼はアミラとの情事に溺れていく。一方から逃げ出して後先考えずにもう一方へ、というフラフラ加減だ。悪い人ではないが、あんまり頭よさそうではない(笑)し、自分勝手でもある。
 しかしこの映画、女性2人も結構したたかでエゴイストだ。結局3人が3人とも、寂しいんだ構ってくれ、自分の(家族の)心配をしてくれと主張しているだけにも見える。相手に対して何がベストか、自分に何が出来るかという所は、あまり念頭になさそうだ。普通こんな男女の三角関係だったら、ドロドロな雰囲気の嫌な話になりそうだが(冷静に考えると実際嫌な話ではある)、この映画は妙にさっぱりしている。これもミンゲラ・マジックなんでしょうか。最後も無理やりハッピーエンドに落とし込んだ感があるのだが、その無理矢理感についてとやかく言う気にならない。
 ぐだぐだな男女関係なのに不思議と希望が見出せるのは、本作のベースに妙にポジティブなものがあるからではないかと思う。娼婦と車の顛末とか、少年の処遇等、人間の善性に対する信頼があるのだ。これは一種のファンタジーでもあるのだろうけど。
 映画としては少々退屈ではあったが、音楽(ガブリエル・ヤレド&アンダーワールド)は良かった。女優2人があまり魅力的でなかったのがひっかかる。あの2人の間でフラフラってのは、あまり説得力ないなぁ・・・。ロビン・ライト・ペンはともかく、ジュリエット・ビノシュってどうかなぁ・・・。