実在の音楽デュオであり、ブラジルの国民的スターであるゼゼ・カマルゴ&ルシアーノと、その家族をモデルにした映画。ブラジルでの観客動員数は『セントラルステーション』『シティ・オブ・ゴッド』を抜き、国内の映画興行成績No1に輝いたそうだ。映画終盤に実際に開催されたたゼゼ・カマルゴ&ルシアーノのコンサートの様子が挿入されるのだが、観客の盛り上がり方がすごすぎる。何故このおっさん2人にそんなに!と思うような熱狂振り。そりゃあ映画にもなるわ。
 小作農家のフランシスコは、妻と7人の子供と暮らしている。彼は大の音楽好きで、息子をミュージシャンにするのが夢。さっそく長男ミロスマルにハーモニカとアコーディオン、次男エミヴァウにギターを買い与え、2人の腕前はめきめきと上達する。しかし地代が払えなくなり一家は都会へ出ることを決意。ミロスマルは何とか家計を助けようと、弟と一緒にバスステーションで歌い始める。
 ミロスマルとエミヴァウが成長していく過程、そして突然訪れる悲劇、ゼゼ・カマルゴ&ルシアーノ誕生までを追った、大河ドラマ的な作品。物語としてはちょっとストレートすぎて起伏に欠けるのだが、実話だって言うししょうがないかな...。ただ、子供時代のエピソードの方がよく練れているので、成長してからの話はもうちょっと割愛してもよかったのでは。父親が息子を売る為にする行動等はなかなか笑えるのだが、それ以外の所はちょっと月並みだった。退屈ではないのだが、もっと短く出来たように思う。
 息子たちの物語であると同時に、父親の物語でもある。むしろ、父親が真の主役だと言ってもいい。この父親は息子の才能を疑わず、お金のない中で何とか彼らの才能を伸ばそうと尽力する。周囲からはバカにされるのだが(大事な家畜を売ってアコーディオンを買ったりするので)、意に介さない。本当に才能があったからいいけど、モノにならなかったら目も当てられない...しかしそれでも応援するのが親の愛なのでしょうか。結果オーライとは言え何か複雑な気分になる。子供の方も、プレッシャーにならなかったのかな...。
 ちなみに最後のコンサート映像(実際のコンサートのもの)に父親も登場する。父親役の俳優がちょっとハンサムだなと思っていたのだが、実際のお父さんも結構かっこよかった。誇張じゃなかったのね(笑)。
 音楽を大事にしている映画なのだが、エンドロール後にも曲が延々と続くのにはちょっと閉口した。ブラジルでは、これが許されるくらい愛されているということなのだろうが。