文明が崩壊して約10年が経過した。空を厚い雲が覆って気温は下がり、地震と火事が耐えない。わずかに生き残った人類は食料の奪い合い、人肉を食べる集団もいた。文明崩壊後に生まれた幼い息子を連れた父親(ヴィゴ・モーテンセン)は南を目指す。息子に理性や道徳を教え、自分達が「火を運ぶ」のだと言い聞かせながら。
原作はコーマック・マッカーシーの同名小説。監督はジョン・ヒルコート。原作にはかなり忠実だ。マッカーシーの文体のように抑制がきいているが、だからこそ「世界の終わり」感がじわじわ浸透してきて辛い。ショッキングなシーン、残酷なシーンが直接映されないのも、ホラー映画的な見せ場を排していることで却って怖い。息子に自殺の方法を教えるところは、さらりと流されているもののやりきれない。
描かれるのは、いざとなったら自殺しろという言葉にも納得してしまうような世界だ。父親の妻(シャリーズ・セロン)は、世界に絶望し夫と子供を残して姿を消してしまう。この世界は誰も他人を信用しないし、他人に親切にすることが命取りになったりもする。そんな中、息子は他人への思いやりを示し、自分達が持つものを分け与えようとする。父親はせめて人間としての尊厳を保つ為に息子に思いやりの心を教えるのだが、それが息子にとっての命取りになりかねないというジレンマ、そして息子に対して正しい父親としての振る舞いを見せられないというジレンマで父親は苦しむ。ただ、主人公が生きてこられたのは他でもない子供の存在があったからではある。子供の存在は苦しみを強めるが希望でもある。
寒さも飢えもしみじみと苦しさが伝わってくるのだが、子供に何もしてやれない、また子供の前でどう振舞えばいいのか、という苦しみの方が切実に現れていた。こちらの方が見る側にとって(少なくとも現代日本では)想像しやすいからだろうか。父親の回想の中で、まだ正常だった頃の世界、そして妻が描かれるのだが、文明崩壊後とのギャップが激しくこれまた辛い。どこでどう間違ってこうなっちゃったの・・・、という絶望感。
見終わってぐったりとする映画ではある。近年の終末映画では『トゥモローワールド』が印象深いが、それなりに起伏があり生の力強さも垣間見えた『トゥモロー~』に対して、本作はかなり地味だしダウナー。しかし地味ゆえに妙に説得力があり見た後はうっすら欝状態になる。私は試写会で見たのだが、上映終了後場内はある意味騒然(笑)。隣に座っていた伯母様方は「こんな気分のまま家に帰れない!」と言っていた。多分、実際に子供を持っている人だと主人公の苦しみがより強烈に響くのではないだろうか。
原作はコーマック・マッカーシーの同名小説。監督はジョン・ヒルコート。原作にはかなり忠実だ。マッカーシーの文体のように抑制がきいているが、だからこそ「世界の終わり」感がじわじわ浸透してきて辛い。ショッキングなシーン、残酷なシーンが直接映されないのも、ホラー映画的な見せ場を排していることで却って怖い。息子に自殺の方法を教えるところは、さらりと流されているもののやりきれない。
描かれるのは、いざとなったら自殺しろという言葉にも納得してしまうような世界だ。父親の妻(シャリーズ・セロン)は、世界に絶望し夫と子供を残して姿を消してしまう。この世界は誰も他人を信用しないし、他人に親切にすることが命取りになったりもする。そんな中、息子は他人への思いやりを示し、自分達が持つものを分け与えようとする。父親はせめて人間としての尊厳を保つ為に息子に思いやりの心を教えるのだが、それが息子にとっての命取りになりかねないというジレンマ、そして息子に対して正しい父親としての振る舞いを見せられないというジレンマで父親は苦しむ。ただ、主人公が生きてこられたのは他でもない子供の存在があったからではある。子供の存在は苦しみを強めるが希望でもある。
寒さも飢えもしみじみと苦しさが伝わってくるのだが、子供に何もしてやれない、また子供の前でどう振舞えばいいのか、という苦しみの方が切実に現れていた。こちらの方が見る側にとって(少なくとも現代日本では)想像しやすいからだろうか。父親の回想の中で、まだ正常だった頃の世界、そして妻が描かれるのだが、文明崩壊後とのギャップが激しくこれまた辛い。どこでどう間違ってこうなっちゃったの・・・、という絶望感。
見終わってぐったりとする映画ではある。近年の終末映画では『トゥモローワールド』が印象深いが、それなりに起伏があり生の力強さも垣間見えた『トゥモロー~』に対して、本作はかなり地味だしダウナー。しかし地味ゆえに妙に説得力があり見た後はうっすら欝状態になる。私は試写会で見たのだが、上映終了後場内はある意味騒然(笑)。隣に座っていた伯母様方は「こんな気分のまま家に帰れない!」と言っていた。多分、実際に子供を持っている人だと主人公の苦しみがより強烈に響くのではないだろうか。