『蜂蜜』が公開中のセミフ・カプランオール監督作品。本作は『蜂蜜』の主人公だったユスフ少年が、高校を卒業した頃の設定だそうだ。『蜂蜜』、本作、『卵』でユスフ三部作となるそうだ。なお本作が製作されたのは2008年なので『蜂蜜』よりも前になる。青年ユスフ(メリヒ・セルチュク)はミルクを売って生計を立てている母親と2人暮らし。彼は詩人を目指しており、雑誌に作品が掲載されるようになるが生活は苦しい。徴兵の通知が来たり、母親に親しい男性ができたことを知ったりで、ユスフは動揺する。
『蜂蜜』は動植物の生気に満ちた山の中が舞台だったが、ユスフ親子は山から降りたようだ。彼らが住んでいるのは町外れ。町の喧騒からは遠く、かといって落ち着いた雰囲気の郊外というわけでもない、土の道に面した殺風景な所だ。どうにもうら寂しい。ユスフは就職するでもなく進学するでもなく(多分進学できるようなお金はない)、家の手伝いをしながら漫然と暮らしている。なんとなく行き場がないような、居心地が悪いような面持ちだ。
ユスフが女の子と車に同乗する羽目になり、休憩(実際にはいちゃつきたい友人カップルに車から追い出された)しているシーン、隣にいる女の子との気まずい雰囲気が生々しくて、いたたまれない。女の子の方はそこそこおしゃれで新しい携帯電話も持っている。対してユスフは冴えない格好だ。また、牛乳を買ってくれるお客を開拓したのに、信用をなくしてしまったりする。こういう、すごく大きなダメージではないが、小さな傷つき方がちょっとずつ積み重なっていく。「ちょっと辛い」感じがリアルで身にしみる。そしてある時点でそれが飽和状態になってしまうのだ。
ユスフを脅かす大きな要素は2つある。1つは徴兵だ。トルコに徴兵制度があると聞いたことはあったが、若者にとってはかなり深刻なものらしい。ユスフも友人もこの世の終わりのような顔をする。一番遊びたいであろう時期に軍生活をするのだから、やはりプレッシャーはあるし嫌だろう。ユスフのような繊細で内向的な性格の人には、かなり辛いのではないかと思う。
もう一つは、母親に恋人ができたらしいということだ。ユスフの母親は見た目かなり若く、美人だ。ユスフとは姉弟のようにも見える。父親亡き後、おそらく母親一人でユスフを育てたのだろう。2人の関係はべったりと密着してはいないが近しいものだ。母親が離れていく寂しさもあるだろうし、母として以外の面を目の当たりにしてしまったショックもあるだろう。映画はユスフの不安をそのままひきずるようにして終わる。
『蜂蜜』ほどの画面構成の精度、演出の無駄のなさは見られず、わりとユルい作りだと思う。撮っている側も何か模索しているような印象だった。
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『蜂蜜』は動植物の生気に満ちた山の中が舞台だったが、ユスフ親子は山から降りたようだ。彼らが住んでいるのは町外れ。町の喧騒からは遠く、かといって落ち着いた雰囲気の郊外というわけでもない、土の道に面した殺風景な所だ。どうにもうら寂しい。ユスフは就職するでもなく進学するでもなく(多分進学できるようなお金はない)、家の手伝いをしながら漫然と暮らしている。なんとなく行き場がないような、居心地が悪いような面持ちだ。
ユスフが女の子と車に同乗する羽目になり、休憩(実際にはいちゃつきたい友人カップルに車から追い出された)しているシーン、隣にいる女の子との気まずい雰囲気が生々しくて、いたたまれない。女の子の方はそこそこおしゃれで新しい携帯電話も持っている。対してユスフは冴えない格好だ。また、牛乳を買ってくれるお客を開拓したのに、信用をなくしてしまったりする。こういう、すごく大きなダメージではないが、小さな傷つき方がちょっとずつ積み重なっていく。「ちょっと辛い」感じがリアルで身にしみる。そしてある時点でそれが飽和状態になってしまうのだ。
ユスフを脅かす大きな要素は2つある。1つは徴兵だ。トルコに徴兵制度があると聞いたことはあったが、若者にとってはかなり深刻なものらしい。ユスフも友人もこの世の終わりのような顔をする。一番遊びたいであろう時期に軍生活をするのだから、やはりプレッシャーはあるし嫌だろう。ユスフのような繊細で内向的な性格の人には、かなり辛いのではないかと思う。
もう一つは、母親に恋人ができたらしいということだ。ユスフの母親は見た目かなり若く、美人だ。ユスフとは姉弟のようにも見える。父親亡き後、おそらく母親一人でユスフを育てたのだろう。2人の関係はべったりと密着してはいないが近しいものだ。母親が離れていく寂しさもあるだろうし、母として以外の面を目の当たりにしてしまったショックもあるだろう。映画はユスフの不安をそのままひきずるようにして終わる。
『蜂蜜』ほどの画面構成の精度、演出の無駄のなさは見られず、わりとユルい作りだと思う。撮っている側も何か模索しているような印象だった。
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